私たちは、希望があれば関節鏡での手術も行います。手術後の再発率が同じ位なら関節鏡で
の手術を選ぶ患者様も多いと思いますが、再発率ゼロの手術方法がある事を知ると、関節鏡
での手術を選ぶ患者様は、まずいません。
顧問 黒田重史
【肩関節腱板断裂】
1. 腱板って何?
 
肩関節には肩甲骨と上腕骨の間に、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋と言う小さな筋肉があ
り、肩を動かす時に働きます。この4つの筋肉の上腕骨側の腱になった部分を、肩関節腱板と
言います。腱板断裂とは、この腱板が切れている状態です。皆さんが、五十肩と言う状態の
30%ほどが腱板断裂です。 
2. 腱板断裂は放っておいてはいけないの?
肩関節には、関節液と言う特殊な水が少量たまっており、関節の潤滑作用と共に関節軟骨に栄
養を供給しています。腱板断裂を長年放置すると、関節液が不足して関節軟骨の栄養障害を起
こし、関節が破裂する事があります。手術を勧める最大の理由は、関節の破壊を防ぐ事です。
3. どんな手術をするの? 
手術はマックローリン法と言って、上腕骨骨頭に溝を作成して、そこに断裂した腱板を引き込
みます。
骨と再縫合した腱板がある程度丈夫になるまでの4週間は、装具を用いて固定します。術後6週
間経てば、車の運転も可能となります。腱板が本来の強さになるには、3ヶ月かかります。
手術翌日から、リハビリを開始します。リハビリに必要な期間は平均で3〜4ヶ月間、入院期間
は、リハビリが通院で出来れば最短10日間です。
4. 内視鏡で手術出来ないの?
出来ます。現在一般的に行われている内視鏡の腱板手術は、アンカー縫合と言って、骨に小さ
なネジを打ち込んで、そこから出ている糸で腱板を縫合します。この方法では、十分な縫合強
度が得られず、腱板の上に糸の結び目が出てしまい、肩の動きにより引っかかる事があります。
この方法では、手術後11〜27%の再断裂が報告されています。当院で手術をした1000人以上
の腱板断裂の患者様で術後再断裂したのは4.6%です。2005年以降、当院では腱板断裂の手術
の第一選択は内視鏡での手術です。
ただし、問題の多いアンカー縫合ではなく、当院独自の方法で通常のマックローリン法を内視
鏡で施行しております。この手術法により、アンカー縫合の問題点をことごとく解決する事が
出来ました。
この方法はアメリカのClinical Orthopaedics and Related Researchと言う一流専門誌に掲載さ
れ、国際的に非常に注目されています。
掲載論文:http://link.springer.com/article/10.1007/s11999-013-3148-7/fulltext.html
【反復性肩関節脱臼】 
1. なぜ肩関節は脱臼を繰り返しやすいの? 
肩関節は、上腕骨骨頭と肩甲骨関節窩の組み合わせです。受け皿である肩甲骨関節窩は上腕
骨骨頭の1/3の面積しかありませんので、肩関節はもともと不安定な関節です。安定性を高め
る為に、受け皿の周囲を関節唇と言う軟骨が取り巻いています。通常の脱臼では、上腕骨は前
下方(矢印の方向)に抜けますので、その通り道の関節唇と前方の靱帯が壊れてしまいます。
これが、2回目の脱臼が起こりやすくなる原因です。初めての脱臼後、2回目の脱臼が起こる確
率は23%ですが、2回目の脱臼を起こした場合、3回目の脱臼が起こる確率は79%(2回目の脱
臼が1年以内に起こると92%)となり、回を重ねるごとに再脱臼の確率は高くなります。
2. なぜ手術をしなければいけないの?
肩関節脱臼は、筋力を鍛えても防げません。外傷が加わった時に、筋肉が防護体制をとる前に
脱臼は起こってしまいます。脱臼時には肩関節に無理な力が加わりますので、脱臼が起こる度
に関節の中は少しずつ壊れます。私たち肩関節専門医が2回目の脱臼を起こした時点で手術を
勧める最大の理由は、関節の破壊を防ぐ事です。
3. どんな手術をするの? 
私たちが施行している手術は、ブリストウ変法と言って、肩甲骨の上の方に出っ張っている鳥
口突起と言う肩甲骨の一部を筋肉をつけたまま約1.6cm切り取って、肩甲骨関節窩の前下方に
移行しネジで留めます。こうする事で、脱臼方向の受け皿を広げます。移行した鳥口突起が関節窩と一体化するには、3ヶ月かかります。移行した鳥口突起には肘を曲げる筋肉が付いて
いますので、術後5週間経過するまでは重い物を持って、肘を曲げる事は避けなければなりま
せん。手術翌日からリハビリを開始し、平均6週間のリハビリが必要です。入院期間は、リハ
ビリが通院出来れば最短で1週間です。運動復帰は、術後3ヶ月経過した時点でトレーニングを
開始し、術後5ヶ月でスポーツに完全復帰出来ます。
4. 再発はしないの? 
反復性肩関節脱臼の手術は色々な方法があり、ベテランの肩関節専門医が手術をしても約6%
以上に脱臼が再発します。今まで、これは仕方のないことだと思われていました。最近盛んに
行われるようになった関節鏡を用いた手術では、再発率はもっと高くなり、2003〜2005年の
日本肩関節学会での報告では、経験豊かな専門医が施行しても再発率は7.5%です。手術後再発
が起こるのは、当然のことなのでしょうか?そんなことはありません。誰もが、再発しない夢
の手術方法を求めています。その答えの一つが、私たちの行っているブリストウ変法と言う手
術方法です。松戸整形外科病院のブリストウ変法は、一般のブリストウ変法とは全く異なる手
術方法です。当院でこの手術をした患者様は現在まで350人ですが、再脱臼を起こした患者様
は一人もいません。
手術後に投球動作とバレーボールのアタック動作を繰り返すと、上腕骨骨頭に軽度の変形を起
こす可能性があるので、利き腕の場合、これらの運動は避けるようにお願いしています。
また、スキーやスノーボードは、肩関節脱臼を起こす主な原因であると言う理由で「しない方
が良いでしょう」とお答えしています。しかし、多くの方がウィンタースポーツに復帰してい
ますが、再脱臼は起こっていません。その他の運動制限はありません。全日本クラスの柔道に
も問題なく復帰しており、ラグビーやアメリカンフットボールなどの激しいスポーツにも完全
復帰出来ます。当院の手術法は、正常以上の強い肩を作り出す事が出来、再発をゼロに抑えています。
5. 関節鏡の手術はどうなの? 
ブリストウ変法と関節鏡での手術の違いを見てみましょう。
 
   
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肩関節の問題で病院を受診する患者様の65%は、中高年で原因不明の肩関節痛を起こし肩が動
きにくい、いわゆる五十肩です。五十肩は色々な肩の病院の総称です。その半分は単純な関節
の炎症で放っておいても治るものです。
しかし、皆さんの言う五十肩の中には、激烈な疼痛を引き起こす「石灰沈着性腱板炎」やリハ
ビリが必要ないわゆる「凍結肩」や手術が必要な「腱板断裂」などが含まれます。これらの疾
患は、正確な診断と積極的な治療が必要です。

「石灰沈着性腱板炎」は、肩に石灰がたまってしまう特殊な炎症です。症状が出始めて1〜2日
の内にとても我慢出来ないような激烈な肩の痛みを起こします。炎症を抑える薬の注射で劇的
に良くなります。

「凍結肩」は、肩関節が固くなって十分に動かない状態です。この状態は、時間を待っても良
くなりません。リハビリが必要です。 
 

肩関節疾患の手術のうち、「肩関節腱板断裂」と「反復性肩関節脱臼」が75%を占めます。
この二つの疾患について、少し詳しく述べてみましょう。

 
 
  ブリストウ変法 関節鏡手術 
 再発  なし  7.5% 
 皮膚切開  5cm  1cm×4ヶ所
 運動復帰  術後3ヶ月から  術後3ヶ月から
 手術時間  40分  2〜3時間
 材料費(保険が使えます)  5,470円  20〜33万円
 術後固定期間  3週間  3週間
 リハビリ期間  6〜8週間  6〜8週間
 入院期間  1週間  4日〜1週間
 外旋制限  10°(関節の固さは意識出来ません)  なし
   
  
 
 
 
  
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肩関節腱板断裂 反復性肩関節脱臼
1. 腱板って何? 1. なぜ肩関節は脱臼を繰り返しやすいの?
2. 腱板断裂は放っておいてはいけないの? 2. なぜ手術をしなければいけないの?
3. どんな手術をするの? 3. どんな手術をするの?
4. 内視鏡で手術出来ないの? 4. 再発はしないの?
  5. 関節鏡の手術はどうなの?